「もう3か月ですので…」 病院から退院を迫られる本当の理由

番号 137

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「まだ一人で歩けないのに、退院ですか?」

母が入院して、2か月半が過ぎました。

最初は、正直ほっとしていました。

自宅で転んで救急搬送され、そのまま入院になったからです。

入院前は、毎日のように母から電話がかかってきました。

「薬、飲んだっけ?」

「今日は何曜日?」

「買い物、どうしよう?」

仕事中に電話が鳴るたびに、

「またか……」

と思ってしまう自分もいました。

だから、病院に入院したときは、

「しばらくは安心できる」

と思ったのです。

ところが、入院から3か月が近づいた頃、病院の相談員さんから電話がありました。

「そろそろ退院先について、ご家族で考えていただければと思います」

一瞬、意味が分かりませんでした。

「え? 退院って……母はまだ一人で歩けないですよね?」

「そうですね。ですので、ご自宅が難しければ、転院先や施設も含めて検討していただくことになります」

頭の中が真っ白になりました。

家に帰せる状態ではありません。

でも、病院にはずっといられないようです。

「じゃあ、どうすればいいんですか?」

思わず聞きました。

返ってきた答えは、

「次の受け入れ先を探していきましょう」

でした。

そしてここで、多くの家族がもう一度つまずきます。

「転院先も、ご家族で探していただくことになります」

そう言われることが、実は少なくありません。

そこで初めて気づきます。

入院したからといって、その病院が最後まで面倒を見てくれるわけではないのです。

そしてもう一つ。

「3か月」という言葉には、家族が思っている以上に、病院側の事情も関係しているということです。

病院は「長く入院してもらうほど儲かる」わけではない

ここは、少し分かりにくいところです。

普通のホテルであれば、長く泊まってもらうほど売上は増えます。

そのため、

「病院も長く入院してもらった方が儲かるのでは?」

と思ってしまう方も多いです。

しかし、医療の仕組みは少し違います。

たとえばDPC/PDPSという制度を使っている病院では、入院費が「1日いくら」という単純な形ではなく、病気の種類や治療内容に応じて、あらかじめ決められた金額で計算されます。

そしてその金額は、

入院してすぐの時期は高め
ある程度たつと少しずつ低くなる

という仕組みになっています。

つまり、

長く入院すればするほど、病院の収入が増える仕組みではありません。

むしろ病院としては、

治療が一段落した患者さんは次の場所へつなぐ
新しく治療が必要な患者さんを受け入れる

という流れを作ることが求められています。

そのため国の制度でも、入院期間を適切に短くする取り組みが評価される仕組みがあります。

こうした背景があるため、

「まだ良くなっていないのに、退院を急かされている」

と感じることが起こります。

しかし病院側の考え方としては、

「この病院で行う治療は一区切りついたので、次の段階へ進みましょう」

という意味合いであることが多いのです。

ここに、家族と病院の大きなズレがあります。

家族が考える「退院」は、

「もう一人で生活できる状態」

ですが、

病院が考える「退院」は、

「この病院での治療が必要な段階を終えた状態」

であることがあるのです。

この2つは、同じではありません。

これからの生活をどう組み立てるかを考える節目

「3か月が近づいたら退院の話が出る」と聞くと、多くの人は驚きます。

しかしここで大切なのは、「追い出される」という感覚ではなく、生活の環境を切り替えるタイミングが来たと捉えることです。

病院は、ずっと生活を続ける場所ではなく、回復や治療のための場所です。

そして3か月前後という時期は、治療の一区切りと同時に、次の生活の場を考え始める節目でもあります。

このタイミングで家族が考えるべきなのは、

自宅に戻った場合、どのような介護が必要になるのか
今の住まいで生活を続けられるのか
リハビリを続ける必要があるのか
介護施設や療養型の病院という選択肢はどうか
仕事や家族の生活との両立は可能か

といった「現実的な生活設計」です。

つまり、退院の話は「終わり」ではなく、次の生活をどう作るかを考えるスタート地点でもあります。

この段階で無理に結論を出す必要はありません。

むしろ重要なのは、病院の相談員や医療ソーシャルワーカーと一緒に、

「どこで、どのように生活していくのが現実的か」

を整理していくことです。

例えば、

在宅で生活するために必要なサービス
リハビリを継続できる医療機関
介護施設の種類と特徴
家族の負担をどう分散するか

こうした情報を集めながら、少しずつ選択肢を絞っていきます。

大切なのは、「退院できるかどうか」だけで考えないことです。

「退院した後、その人がどんな生活を続けていくのか」

ここまで含めて考えることで、初めて現実的な判断ができます。

3か月という節目は、不安になる時期でもありますが、同時に生活を見直す大きなチャンスでもあります。

焦って結論を出すのではなく、これからの暮らしをどう組み立てるかを、家族と病院が一緒に考えていくことが何より大切です。

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